従業員持株会とは?奨励金・配当金の仕組みや従業員のメリット

カブエ
お兄ちゃんがさ、会社の従業員持株会っていうのに加入してるんだってさ。
会社でも株式投資ができるって事なのかな?

かぶらば先生
最近、様々な会社で増えてきている制度ですね。
この従業員持株会に加入すると、たくさんのメリットがあるんですよ。

 

最近の会社の特徴の1つに従業員持株会というものがあります。

これは会社で働く従業員のために資産形成をしてもらおうという制度なんですよね。

この持株会に加入する人も増加傾向にあります。

でもこれがどんなメリットがあるのか、いまいち理解できていない人がいるのも事実です。

そこで今回は『従業員持株会とは?奨励金・配当金の仕組みや従業員のメリット』と題して、持ち株会の仕組みや、会社と従業員それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。

あまりよく分らなくて加入した人も、従業員持株会についての理解を深めていきましょう。

従業員持株会とは?

かぶらば先生
従業員持株会は、会社が従業員のために用意する資産形成制度の1つです。
従業員持株会とは、毎年、給与から一定額を天引きし、勤めている会社の株式を積み立て購入するという制度です。
小額の資金で投資ができ、拠出額に応じて配当金も得られますね。
種類もさまざまで、以下のようなものがあります。
持株会の種類
従業員持株会:自社の株を従業員が取得できる
拡大従業員持株会:非上場会社の従業員が親会社などの株式を取得できる
役員持株会:会社の役員が当該会社の株式を取得できる
取引先持株会:会社の取引先が当該会社の株式を取得できる
この従業員持株会の組織形態は民法に基づく組合で、経営側の役員は加入する事ができません。
でもここ数年、従業員持株会の加入者数は増加傾向にあります。

毎年増加している"持株会加入者数"

東京証券取引所が公表している「2019年度 従業員持株会状況調査結果」によると、制度を導入する会社の増加とともに、持株会加入者も増加しています。
「従業員持株会」の対象会社数
2015年 3123社
2016年 3144社
2017年 3184社
2018年 3206社
2019年 3236社
持株会の加入者数
2015年 262万人
2016年 272万人
2017年 278.6万人
2018年 284.8万人
2019年 289.3万人
従業員持株会が保有している株式の時価総額は、2017年の調査開始以来初めて6兆円を超え、6兆1112億円となりました。
また、2015年から2019年の従業員持株会の加入者1人あたりの平均保有額は、170万円~219万円の間で推移していますね。

従業員持株会のメリット

自社株の配当が上がれば、従業員へと還元されるので、従業員のモチベーションアップのために持株会を設定する会社が増えています。
従業員持株会の注目が高まっているのは、以下のメリットがあるからなんですね。
従業員持株会のメリット
福利厚生の充実化
従業員のヤル気の向上
安定した株主
奨励金の支給
資産形成がしやすい
1株から購入できる
インサイダー取引が適応されない

福利厚生の充実化

従業員持株会は、ほとんどの上場企業や一部の非上場企業で採用されていて、一般的にそういった企業は福利厚生制度として位置づけられています。

株の利益が出て配当を出せば、そのいくらかが従業員へと還元されるので、従業員の長期的な資産形成を支援できる。

その結果、福利厚生制度の充実につながるワケですね。

また、福利厚生が充実すると他社との差別化にもなり、優秀な人材の確保がしやすくなってきますよ。

従業員のヤル気の向上

会社の業績が良くなれば自社株の配当も上がっていき、株主でもある従業員へと還元されるので、従業員のモチベーションがアップします。

しかも自分の勤務する会社の株を保有しているため、会社の経営や事業などにも興味を持ち、さらに業績を上げようと仕事意識が高まるように。

また、働きがいやヤル気の向上にもつながり、途中で退職する事なく長期間にわたって会社の成長に貢献するようになってきます。

安定した株主

従業員持株会は、会社側からすれば長期的に自社株を保有してくれる安定した株主になります。

そもそも株を発行する会社にとって、会社の運営権を守る事が最も重要なんですよね。

従業員持株会の場合、一般株主よりも自社の経営方針に賛同してくれていて好意的な事がほとんどです。

そのため、他の一般株主から自社株を大量に取得される敵対的買収の防止としての効果がありますね。

※敵対的買収について知りたい人は、この記事で説明していますよ。

奨励金支給

かぶらば先生
奨励金支給とは、従業員持株会を通じて株を購入する場合に支給されるお金の事です。

 

この奨励金支給ですが、会社によって居室金1,000円に対して、100円~150円もの奨励金が出る場合があります。

たとえ銀行に預金していても近年では超低金利時代なので、それを考えると従業員にとって従業員持株会は、大きなメリットになりますね。

奨励金は従業員持株会への加入促進にもなるため、多くの会社が採用していますよ。

資産形成がしやすい

従業員持株会に加入すると、毎月自動的に給料や賞与から一定額が差し引かれて、自社株の購入へと回ります。

そのため、「毎月の収入では、なかなか貯められない」という人でも資産形成がしやくなるんですね。

特に、自己管理が苦手で金融機関の手続きなどが面倒な人には、余計な手間がかからない従業員持株会の加入にはメリットしかありません。

しかも会社に利益が出れば配当金も増えるので、さらに財産が増えていきます。

もう「私のために資産形成してくれるなんて…ステキ♡」としか言えませんね。

1株から購入できる

通常、株は「単元」という単語で売買されます。

何株を1単元とするかは会社によって違いますが、2018年から全国の証券取引所に上場する全ての株式が100株単位(1単元)での取引に統一されているんですよね。

1株当たりの金額が高ければ投資したいと思っても、まとまったお金を用意するのは簡単ではありません。

でも従業員持株会で購入する場合なら、単元を気にせず1株から購入できます。

そのため、毎月1株ずつでも株を買っていけば、貯蓄感覚で財産を増やしていけますよ。

インサイダー取引が適用されない

かぶらば先生
インサイダー取引とは、従業員や役員・大株主などの会社関係者が株価に影響を与える非公表情報を知った上で、株の売却を行う事です。
インサイダー取引は公平な株式市場を守るために、金融商品取引法第166条で禁止されています。
つまり違法行為なんですが、つい魔が差してしまったり、他の投資家から持ちかけられたりする事があるかもしれません。
でも従業員持株会だと、定期的な株の売買を目的として設置しているので、インサイダー取引が適応されないというワケなんですね。

従業員持株会のデメリット

従業員持株会の設置は、会社側と従業員側の双方に大きなメリットがあるので、採用する会社も増えてきているのですが、以下のデメリットも存在します。

従業員持株会のデメリット
議決権問題
値動きは関係ない
収入と資産が会社に依存する
会社は配当を出し続ける
株主優待が受けられない
売却時は注意が必要

 

議決権問題

まずデメリットとして挙げられるのが、議決問題です。

会社の株を保有している従業員は、株主総会の議決権も持つ事ができます。

少数株主の権利として、3%の議決権を保有していれば"帳簿閲覧権"、1%以上で"提案権"、1株以上で"代表訴訟提起権"を行う事が可能になります。

基本的に経営への大きな悪影響を及ぼすケースは少ないのですが、安定的な経営が難しくなる可能性も出てくるんですよね。

そこで、従業員持株会に対して議決権をなくして、配当を優先する株だけを購入するといった対策を取る会社もありますよ。

値動きは関係ない

一般的に、株は安い時に買って価値が上がって高くなった時に売ります。

でも従業員持株会の場合は、毎月自動的に給料や賞与から一定額が差し引かれて自社株の購入に回るので、株価が高い時でも関係なく自動的に購入されてしまいます。

たとえば毎月10,000円出資していて、1株1,000円なら月に10株購入できますが、株価が上がり、1株2,000円になると5株しか購入できず損をした気分になりますよね。

つまり株の値動きに関係なく、安かろうが高かろうが自動的に購入するワケなんです。

ちなみに従業員持株会で購入するのは、勤務する会社の株のみになりますよ。

収入と資産が会社に依存する

従業員持株会に加入すると、収入と資産が勤務する会社の業績に依存しやすくなります。

場合によっては、会社の業績が悪くなって賞与がカットされる事もあるかもしれません。

そうなると株価が下落する可能性も高いので、投資した分の利益を回収できなくなる場合があります。

さらに保有資産が減ってしまい、最悪の場合、倒産して仕事を失う可能性だってあるんですね。

いくら会社がやってくれるとは言え、資産運用の全てを従業員持株会だけに託しておくのは大きなリスクだと言えますよ。

会社は配当を出し続ける

従業員持株会を設置している会社は、配当を出し続ける事が前提になります。

そのため、「業績が上がらずに経営が不安定な時に配当を出して、経営がさらに圧迫されてしまう」というケースも想定されますね。

でも配当が出ないと、従業員持株会に加入している従業員は「もしかして会社の業績が良くないのでは…?」と不安になってしまいます。

配当を目的に加入している従業員のモチベーションの低下につながってしまいますよ。

株主優待が受けられない

株式投資を行う人の中には、株主優待を目的にしている人も少なくありません。

たとえば、施設の優待券や自社製品の詰め合わせ、カタログギフトなど、多くの会社では株主に対してさまざまな優待を行っています。

でも従業員株主会の名義で管理しているので、株を購入しても株主優待は受けられません。

売却時は注意が必要

従業員持株会で購入した株は従業員個人の資産なのですが、現金のように必要な時に引き出す事ができません。

また、購入するときは1株からでも購入できたのですが、株の売却だと原則1単元ごとになります。

しかも売却するには個人名義の証券口座が必要で、個人口座を作るのにも数週間かかります。

たとえ株価が大幅に下落して株を売りたくても、すぐには対応できないんですね。

他にも、最低売買数量に達していない株を現金に換える場合は、持ち株会を解約して買い取ってもらうようになりますよ

従業員持株会について注意すべき点

従業員持株会は、通常の株式投資よりもリスクが低いので、うまく利用すれば良い資産運用になります。

でも従業員持株会について注意すべき点もあるので、ここで紹介しておきましょう。

購入した株は途中で売却できる

従業員持株会で購入した株は、途中で売却する事が可能なんですよね。

売却までの手順は以下のようになります。

従業員持株会で購入した株の売却手順

①会社指定の証券会社に口座を開設する

株指導員1号
従業員持株会から自分の株を引き出して自分の口座に入れておくための口座を開設しましょう!


②持株会から自分の株を証券口座へ移す

株指導員2号
持株会制度の規制に従って、自分の株を証券口座に移しましょう!
人事部などに申請すれば、移管できる会社も多いですよ。
③証券会社で、売却手続きを行う

株指導員3号
証券会社に連絡をして、売却手続きを行いましょう!
売却ミッション完了

管理職は株を売れない

管理職になると従業員持株会で購入した株を売れないという会社もあります。

管理職はインサイダー取引の可能異性に関わるからといった理由ですね。

また、従業員持株会の規制によって、管理職は決算前などの記事は売却が認められないなど、株の売却が制限される場合もあります。

ただし、事前に会社へ申請してインサイダー取引ではないと確認が取れていれば、問題なく株が売却できますよ。

積み立ての停止

規制によって申請の方法は変わってくるのですが、少額でも毎月の積立が難しくなった場合、積み立てを停止する事が可能です。

まぁ、積み立てを停止しても配当金は入ってくるので、少額でも貯蓄は増えていくんですよね。

ですが、金銭面などではなく「従業員持株会は全く儲からない」「株価が上がらない」といった理由で退会したい人もいるかもしれません。

基本的に従業員持株会は、1度退会してしまうと2度と入会できなくなってしまいます。

退会してしまうか、このまま持株会を続けていくか…

「悔いが残らない方を自分で選べ」って事ですね。

まとめ

さて、今回は『従業員持株会とは?奨励金・配当金の仕組みや従業員のメリット』と題して、持ち株会の仕組みや、会社と従業員それぞれのメリット・デメリットについて紹介しました。

この記事をまとめると以下の通り。

従業員持株会とは、自社の株を従業員が取得できる制度
会社の利益の一部を株主の従業員へ還元して資産形成を行なっていくもので、従業員のモチベーションの向上につながる
会社としても従業員の士気を高められ、会社の成長にもつながる
一般の株式投資と違い、自動的に自社株を購入するので資産形成しやすいが、会社の経営状態に左右される
従業員持株会は、加入する事で自動的に給与から差し引かれて自社の株主になるので、働いているだけで資産形成ができます。
ただ、会社の経営によって左右されてしまうので、この制度だけに依存せず、少しは独自に資産形成をしていく必要もあります。
でも、株初心者であっても低いリスクで資産形成できるのは嬉しいですね。

かぶらば先生
あなたも自分の会社に従業員持株会があれば、ぜひ加入しておきましょう!
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