知らないと恥ずかしい!?東証の市場再編(市場区分見直し)を解説

カブエ
東証が市場再編したんだってね。
でもどうして東証一部がなくなっちゃうんだろう?

かぶらば先生
東証一部など5つの市場はなくなってしまいますが、新たに3つの市場に再編成されますよ。
日本国内で一番有名で大きい東京証券取引所、通称「東証」ですが、2022年4月に再編(市場区分の見直し)がされました。
あまり株式に関心がない人には興味がないお話かもしれませんが、対象の企業関係者や投資家にとっては「何…だと…?」と言ってしまうほど大きな出来事だったんです。
あなたは東証の市場再編がどんなものなのか知っていますか?
何で東証一部がなくなってしまったのか分かりますか?
友人に聞かれた時に答えられなかったら、「ダサ…ダサイよ…ダサすぎるよ」なんて言われてしまうかもしれませんよ。
そこで今回は『知らないと恥ずかしい!?東証の市場再編(市場区分見直し)を解説』と題して、東証の市場再編がどんなもので、投資家にどんな影響があるものなのかを詳しく紹介していきましょう。
※これまでの東証がどのようなものだったのかは、こちらの記事で詳しく紹介しています。

東京証券取引所再編(市場区分の見直し)により、5市場が3市場に

東京証券取引所では、2022年4月より、以下のような市場区分へと見直されました。

再編前の市場区分

東証一部
流通性が高い企業向けの市場です!

東証二部
実績ある企業向けの市場です!

JASDAQスタンダード
一定の事業規模と実績を持つ成長企業です!

JASDAQグロース
将来の成長可能性に富んだ企業群です!

マザーズ
新興企業向けの市場です!
再編後の市場区分

プライム
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額 + より高いガバナンス水準を持つ企業向けの市場!
主に東証一部が含まれる。

スタンダード
一定の時価総額 + 基本的なガバナンス水準を持つ企業向けの市場!
主に東証一部・東証二部・JASDAQスタンダードが含まれる。

グロース
高い成長可能性を実現するための事業計画を適時・適切に開示 + 相対的にリスクが高い企業向けの市場!
主にJASDAQグロース・マザーズが含まれる。
「ヤダッ…どうして市場区分が変わってしまったの!?」
こんな風に思ってしまいますよね。
今回、市場区分の見直しまでになってしまったのは、東証一部上場企業の数が増えすぎて、日本の最上位市場として質の低下が起きている事が原因とされているからなんです。
正直な話、海外では本当に選ばれた企業しか最上位市場に存在していないのに、日本では海外ほど厳しい条件でなくても上場できていたから、「もっと厳選して、市場のレベルを上げましょう」という事なんですね。
実際、東京証券取引所が公表している資料でも「国内外の多様な投資家から高い支持を得られる魅力的な現物市場を提供する事を目的として、3つの市場区分に見直す」と記載されているんです。

市場区分見直しの理由は、一部上場企業の質の低下

市場区分見直しの1番の理由は、一部上場企業の質の低下にあります。

2022年3月末で、東証一部に上場している企業数は2,176社となっていて、年々増加傾向が続いていました。

ところが、一部上場企業の約35%の754社は、プライム市場の新規上場基準でもある時価総額の250億円を下回っていたり、約50%の1,096社のPBR(株価純資産倍率)が1を下回っていたりするなど、一部上場企業の低下も問題になっていたワケです。

かぶらば先生
PBR(株価純資産倍率)とは、株価が1株あたり純資産の何倍まで買われているか、1株あたり純資産の何倍の値段がつけられているかを見る投資尺度の事です。
ちなみに、一部上場企業の質を担保できないまま企業のみが増えてしまったのは、一部上場基準や一部指定基準、マザーズからの市場変更基準や上場廃止基準に違いがあったためなんですね。
2020年10月までの基準の違い
一部上場基準 一部指定基準 市場変更基準 上場廃止基準
株主数 2,200人以上 2,200人以上 2,200人以上 400人未満
流通株式数 2万単位以上 2万単位以上 2万単位以上 2千単位未満
時価総額 250億円以上 40億円以上 40億円以上 10億円未満

※一部抜粋して比較

まずはマザーズに上場してから一部へ市場変更する企業がどんどん増えてきたために、一部上場企業の数が増えすぎてしまったんですね。

また、上場廃止基準や東証二部への指定替え基準も低かったので、東証一部に上場した後は、たとえ時価総額が低くても、他の企業のプレッシャーがほとんどない状態になってしまっていたんです。

しかも、東証一部上場企業は全てTOPIXに組み込まれるため、企業価値が低く、経営改善に向けた努力もしていない企業にまでインデックス運用の資金が流れ込んでしまうといった弊害も起こっていたんですね。

新市場区分の上場基準は?

新市場区分"プライム"・"スタンダード"・"グロース"各市場での新規上場基準は、以下のようになります。

新市場区分の新規上場基準
プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 400人以上 150人以上
流通株式数 2万単位以上 2千単位以上 1千単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上
流通株式比率 35%以上 25%以上 25%以上
時価総額 250億円以上 規定なし 規定なし
収益基盤 A.最近2年間の利益合計25億円以上

または

B.売上高100円かつ時価総額1,000億円以上

最近1年間の利益が1億円以上 規定なし

※上場基準より一部抜粋。

新市場区分では、新規上場基準と上場廃止基準は原則共通になっています。

しかも以前のような指定基準や市場変更基準もなくなっているので市場変更をする時にも新規上場基準と同じ基準をクリアしていかなければいけません。

これまでとは違い、各市場にいる全企業が高いハードルをクリアする事になるワケですね。

流通株式の定義の見直し

実は、今回の市場再編でとても重要になるのが、この「流通株式の定義」の見直しです。

市場再編では、売買のしやすさの向上とガバナンス改善の観点から、流通株式比率と流通株式時価総額の基準が定められるんですね。

そして同時に"流通株式の定義の見直し"も、以下のように実施されました。

流通株式数の計算式の見直し
市場再編前の計算式
上場株式数-(主要株主が所有する株式+役員保有株式数+自己株式数)=流通株式数
市場再編後の計算式
上場株式数-(主要株主が所有する株式+役員等所有株式数+自己株式数+国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式その他取引所が固定的と認める株式)=流通株式数
※役員等所有株式数は、役員以外の利害関係者を含む
今回新しく設けられたのが赤字部分ですね。
そして特に注目してほしいのが、「国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式」という部分。
今までは、企業間の持ち合い株や政策保有株式が10%未満なら流通株式として認められていたんですが、今回の市場区分の見直しでは非流通株式となってしまいます。
そのため、政策保有株式やグループ内での持ち合い株の保有が多い企業は、徐々に売ってもらう必要が出てくるワケですね。
もちろん流通株式比率だけではなく、プライムの流通株式時価総額100億円を達成するためには、株価の向上につながる積極的なIR活動や、企業が成長するための事業運営をしていく必要もあるんです。

企業への経過措置は?

流通株式関連で大きな変化のある市場再編だったんですが、「そんなに急に言われても、対応できるわけないじゃない!」ってなりますよね。

そこで当分の間は、以前の指定替え基準や上場廃止基準と同じ水準の経過措置が用意されています。

経過措置の基準
プライム スタンダード グロース
株主数 800人以上 150人以上 150人以上
流通株式数 1万単位以上 500単位以上 500単位以上
流通株式時価総額 10億円以上 2.5億円以上 2.5億円以上
流通株式比率 5%以上 5%以上 5%以上
月平均売買高 40単位以上 10単位以上 10単位以上

これはいずれも第一部上場企業がプライム市場を選択した場合第一部・第二部・JASDAQスタンダード上場企業がスタンダード市場を選択した場合マザーズ上場企業・JASDAQグロース上場企業がグロース市場を選択した場合を表しています。

しかも、特設注意市場銘柄に指定された場合は、経過措置の適応対象外となっています。

もし、選択先の新市場区分の上場維持基準に適合していなかった場合は、市場選択の申請時に「上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出しなければいけません。

無事に移行できたとしても、移行後には計画書に基づく進捗状況を、事業年度末日から3カ月以内に開示する必要があります。

ちなみに、経過措置の期間は"当分の間"と表示されているだけで、まだ未定という事になっていますよ。

東証再編で、投資家への影響はあるのか?

東証再編によって、企業には大きな影響があるのですが、投資家や株価にはどういった影響があるのでしょうか?

実は投資家にとって、以下の大きな影響がありそうなんですね。

投資家への影響
株主優待の廃止が増える
TOPIXが変更になる
コートレートガバナンスが改善する

株主優待の廃止が増える

まず挙げられるのが、「株主優待の廃止」です。

かぶらば先生
株主優待とは、主に個人投資家を引き付けるための株主優遇策の事です。
この株主優待が目当てで、お目当ての企業の株を購入する人もいるほどだったんですが…
今回の見直しで、上場基準の必要株主数が減少し、上場維持のための株主数をそこまで集める必要がなくなったので、株主優待を導入していた企業は株主優待を廃止する傾向が強くなっています。
そもそも優待は日本独自の風習で、海外の投資家から見ると優待は無駄なコストでしかないようですね。
「もう…優待をするくらいなら、配当で還元してよぉ♡」という流れから、株主優待を廃止して、増配を行っていく企業が増えているんですね。

TOPIXが変更になる

市場再編にともなって、東証一部の全銘柄を組み込んでいるTOPIXも変更があります。

再編前の2020年12月に、東証は以下のような方針を発表していました。

東京証券取引所による方針
TOPIXは市場区分と切り離し、市場代表性に加え投資対象としての機能性の更なる工場を目指す。
多様のパッシブ連動資産や市場への影響を考慮し段階的に移行。
構成銘柄のうち、流通株式時価総額100億円未満の銘柄について「段階的ウェイト低減銘柄」とし、2022年10月末日から四半期ごとに10段階で構成比率を逓減。
※JPXより参照
TOPIXの変更によって構成銘柄から外されてしまう企業は、インデックス型の投資信託やETFの投資対象からも除外されてしまうので、株価にも大きな影響を与えてしまいます。
そのため、自分の投資先企業がTOPIXから外されてしまわないか、常にチェックしておく必要がありますね。

コーポレートガバナンスの改善

コーポレートガバナンス・コードの改訂時に、プライム市場では独立社外取締役を3分の1以上にするように求められる方向になっています。

かぶらば先生
コーポレートガバナンスとは、企業が自分に都合のいい経営をして関係者に不利益を与えないように、社外取締役や社外監査役など社外の管理者によって経営を監視する仕組みの事です。
数年前にも企業の不祥事で株価に多いな影響を与えた事がありましたが、ガバナンス改善によって企業価値向上に向けた取り組みがされていけば、企業にとっても投資家にとってもプラスの影響が大きいですね。
と、ここまで東京証券取引所の再編について説明してきました。
今回の市場再編は、日本の株式市場にとって大きな変化です。
再編成前に比べて良い所も悪い所もありますが、しっかりと3つの市場の特徴を頭に入れて対応をしていって下さいね。

まとめ

さて、今回は『知らないと恥ずかしい!?東証の市場再編(市場区分見直し)を解説』と題して、東証の市場再編がどんなもので、投資家にどんな影響があるものなのかを詳しく紹介しました。
この記事をまとめると以下の通り。
東証は2022年4月より、市場再編(市場区分の見直し)が行われた
東証一部・東証二部・JASDAQスタンダード・JASDAQグロース・マザーズの5つから、新たに"プライム"・"スタンダード"・"グロース"の3つの市場に変更になる
流通株式の定義が変わる事で、持ち合い株や政策保有株式の売り出し増加の可能性がある
TOPIX算出基準の変更・コーポレートガバナンスの改善・株主優待の廃止など、投資家への影響が大きい
今回の東証再編ですが、対象の企業関係者や投資家にとっては大きな出来事だったんですね。
ですが、海外の投資家からも選ばれるような魅力的な市場にしていくためには必要な事だったのかもしれません。
企業や投資家も慣れるまで大変ですが、これらの内容を頭に入れて、しっかりと対応していきましょう。

かぶらば先生
東証の再編(市場区分の見直し)の内容をしっかり覚えて、友達に自慢しちゃいましょう!
おすすめの記事